CSRマガジン 年始特集

2012年新たな出会いと希望に向かって

  1. 石巻市立蛇田小学校 教諭 木村 明子 氏
  2. [コラム] 地域を結ぶ「復興大漁旗」
  3. 元国連UNHCR協会事務局長 高嶋由美子氏
  4. 株式会社ドウゾ 代表取締役CEO 棚田 信子 氏
  5. 非営利型一般社団法人 チームともだち 代表理事 登内芳也氏
  6. 株式会社久慈ソーイング 代表取締役 中田利雄 社長
  7. [コラム] 街中、ダルマだらけ大作戦
  8. NPO法人ポラリスプロジェクトジャパン 代表 藤原志帆子氏
  9. ソーラーエネルギージャパン 代表 宮本 ルミ子 氏
  10. CSRマガジンスタッフ(宮城県仙台在住) 藤森有紀
  11. 拓殖大学国際学部 長坂 寿久 教授


NPO法人ポラリスプロジェクトジャパン 代表 藤原志帆子氏
「人身取引のない日本へ」
2011年には国内初の人身取引に関する大規模な国際シンポジウムを開催

2011年は11月のシンポジウムの成果を含め、私たちの活動も、様々な成果を残しました。
年の瀬の12月になると、いつも私は一人の少女のことを思い出します。
その少女、カオリちゃん(仮名)はインターネットでSOSを発信していました。
そのSOS を受け取った掲示板の見知らぬ人が、ポラリスのホットラインに電話相談をし、その後いくつかのやり取りの後、やっと私たちはカオリちゃんにつながったのです。

カオリちゃんは、友達の紹介で少し年上の男性に連れられて、親に黙って家出をしました。車で数時間の大きな街の郊外に住むその男性が売春斡旋業者だとは、思いもよりませんでした。出会い系サイトや、カオリちゃんが使っていた交流サイトで売春客を集めては、男性は彼女をホテルまで送り出し、お金を持ってこないと車にも家にも入れませんでした。

朝の一人になる時間が、彼女がポラリスに電話をできる唯一の時間でした。
無理やり「ウリ(売春)」を強要されるようになってから、一ヶ月が経っていました。
売春なんかする子のことなんか、警察も誰も気にも留めないし、誰も助けになんかこない。そう彼女は言われていました。

寒くなった12月の始め、私ともう1名のスタッフはカオリちゃんがいる街の駅に降り、彼女に会いました。
小柄なカオリちゃんは私たちが信用できる相手かどうかもわからずに、
ただ「インターネットで相談をした知人からの強い勧めだから」と私たちに会いました。
ぽつりぽつりとかすれる声で、これまでのことを話してくれます。次の週、凍えるような寒さの中、もう一度再会した私たちは、バスにのって管轄の警察に向かいました。

警察や行政、カオリちゃんのお父さんなどの協力があり、無事故郷の街まで帰り、安心できる環境に戻ることができた彼女。皆の協力だけでなく、インターネットでの彼女のSOSを聞き漏らさず、ポラリスの電話番号を見つけ、本人に伝えてくれた通報者の人にも本当に感謝しています。

カオリちゃんとの出会いから3年たち、三度目の12月を迎えましたが、
彼女を思うたび、1本の電話が一人の人生を救うことにもなると感じます。
今年も、ポラリスの通話料無料のホットラインは皆様のおかげで無事続けることができました。緊急の相談の場合は、昼夜関係なく私たちは動き出します。
残念ながらこの喫緊の人身取引問題について、日本の社会やメディアが喚起する機会は少ないのですが、皆様のご支援のおかげでそれでも多くの女性や子どもたちがポラリスにつながります。

ポラリスプロジェクトジャパンは、カオリちゃんのような多くの女性や子どもたちの被害者を、ポラリスと共に継続的に支えていただく「ポラリスAKARIプロジェクト」を立ち上げました。

AKARIプロジェクトでは、2012年度の最低限の相談電話の運営費をまかなうためにポラリスパートナーを募集しています。皆さまの力を分けてください。そして、暗闇の中で声を上げられずにいる女性や子どもたちの希望の灯り(AKARI)になってください。
皆さまの2011年の応援を、心より感謝いたしております。
引き続きAKARIプロジェクトを、どうぞよろしくお願いいたします。
(メール原稿を一部CSRマガジン編集部が編集しています)

NPO法人ポラリスプロジェクトジャパン「AKARIプロジェクト」について
http://www.polarisproject.jp/

CSRマガジン記事「日本人が知らない「人身取引(ヒューマン・トラフィッキング)」はコチラ↓
http://csr-magazine.com/2011/11/01/analysts-polarisproject/

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