CSRフラッシュ

新型コロナで「家庭の所得減少」と「子どもの学習機会減少」が深刻に

生活困窮世帯の保護者1,902名へのアンケートから

子どもの教育格差の解消に取り組む公益社団法人チャンス・フォー・チルドレン(代表者:今井悠介・奥野慧)。このほど新型コロナの子どもや家庭に及ぼす影響について、生活困窮世帯の保護者1,902名に対して調査を行いました。コロナ禍が長期化する中、多くの家庭で所得が減少し、子どもたちの学習機会が減少している実態が明らかになりました。[2022年8月10日公開]

学習する子どもたち(写真は©Natsuki Yasuda)

経済格差で子どもたちの学力格差がより深刻に

今回の調査は、チャンス・フォー・チルドレンが行うスタディクーポン(学校外教育費補助)利用者の募集に申請してきた小学生・中学生・高校生の子どもを持つ保護者を対象に2022年2月21日~3月25日の間にアンケートを行ったもの。回答者数は1,902名に及びました。

回答者属性(学年別・地域別)

世帯構成別ではひとり親世帯が68.8%を占め、就業形態別では非正規または自営業または無職が全体の6割以上を占めています。以下に今回の調査で明らかになった特徴的な事柄を3点にまとめました。


調査結果その1

生活困窮世帯の7割以上が、コロナ禍の影響で所得減少の傾向にある

・調査によると、生活困窮世帯の49%がコロナ禍の影響で所得減少したと回答しました。また、今後所得が減少する見込みがあると回答した世帯も合わせると、74%に上りました。

・背景として、コロナ禍の影響で勤務日数が減少した割合が39%、休職・休業者は14%、失業・廃業者は9%おり、生活困窮世帯の大多数がコロナ禍で勤務状況が変化していることが分かりました。

調査結果その2

生活困窮世帯の子どもの3割~4割に「学習機会の減少」「学力の低下」「学習意欲の低下」などの困りごとが生じている

・コロナ禍の影響による子どもの教育や学習に関する困りごとについて尋ねたところ、「学校事情による授業機会減少(休校・学級閉鎖)」と回答した割合が45%、「学習塾に通えない」と回答した割合が31%でありました。また、「学習意欲の低下または学習習慣がなくなった」と回答した割合が40%、「学力の低下」と回答した割合が37%でした。

調査結果その3

子どもの教育や学習に関する困りごとのうち、「体験機会の減少」と回答した割合がもっと多くなった(うち学校内の体験:7割、学校外の体験:5割)

・複数選択による回答は以下のとおりです。

回答者の率直な声を以下にまとめました。(一部抜粋)

・新型コロナウイルス感染症流行により失業してしまい、その後はひとり親であることや、働ける時間が限られていることなどもあり、正社員にはつけず、パートや派遣で繋いでいます。子どもたちにとてもつらい思いをさせてしまっており、申し訳ない思いです。(小学3年生保護者)

・コロナの影響で夫の仕事が激減し、家庭内でのストレスからDVのような状態に。約1年くらいで勉強する環境が激減し、成績がかなり落ちました。安い塾をさがしてますが中々厳しい状況です。(中学3年生保護者)

・ひとり親世帯のため私の収入のみでやりくりしています。私は派遣社員として働いていますがコロナによって仕事(求人)が大幅に減少しました。また、コロナによって派遣切りにも合い本当に困っています。現在も仕事を探していますが、なかなか希望条件に合う求人がありません。(中学3年生保護者)

・学級閉鎖中、こどものオンライン授業や課題プリントの管理を母親がすべて援助しなければならず、母親は精神的にかなり疲労しています。抗うつ剤や抗不安剤などに頼らざる得なくなりました。今もなかなか回復できておらず、家で休養している時間が多くなりました。(高校1年生保護者)

・小学生になってからすぐに学校が休校になり、学校で渡されたプリントを家で行っていました。学校が再開したあとは学習スピードが早かったため、1年生の段階でつまづくことが多く、苦手意識が高くなり、自分は出来ないからと諦め癖がついたと思います。(小学3年生保護者)

・学級閉鎖や感染により、学校に通えない子どもの世話をするため、パートタイムで働く妻が仕事を休まざるを得なくなり、収入が減りました。それにより、塾を辞めざるを得なくなりました。(中学3年生保護者)

・オンライン授業になり学習意欲がなくなって、学校が始まってもなかなか行けなくなり成績が下がってしまいました。わからない問題を解くのが嫌なのかテストを受けなくなってしまい、来年受験できるのかが不安です。(中学3年生保護者)

・学校で週1回ボランティアの大学生による任意の学習支援があったが、コロナで今年度も中止、結局学校外で誰かに勉強を教えてもらえる人もおらず、成績は最下位に近い状態です。先生からは、学校外で塾などに行って下さいと言われているが経済的に難しい。(中学2年生保護者)

※調査報告書(全文)はホームページよりダウンロードできます。
https://cfc.or.jp/wp-content/uploads/2022/07/report2207.pdf

学習塾で学ぶ子どもたち(写真は©Natsuki Yasuda)

コロナ禍の子どもたちの学びと体験を支援するため、9月11日まで、「夏の募金」を実施します

新型コロナウイルスの影響の長期化をふまえ、チャンス・フォー・チルドレンでは6月1日~9月11日までの期間「夏の募金」を実施しています。

チャンス・フォー・チルドレンが今年度実施したスタディクーポンの新規利用者募集に対しては、過去最多の1,902名から応募があったものの、1,500名以上に支援を届けることができませんでした。今後、一人でも多くの子どもたちに学びと体験の機会を届けるべく、1,000万円を目標に個人および法人の寄付者を募っています。

子どもたちの学習を支援するスタディクーポン(写真は©Natsuki Yasuda)

公益社団法人チャンス・フォー・チルドレン

国内の子どもの貧困・教育格差解消を目的に、2009年にプロジェクト発足、東日本大震災の発生を受け、2011年6月に法人設立。経済的な理由で学校外教育を受けることができない生活困窮家庭の子どもたちに、学校外教育で利用できる「スタディクーポン」を提供するとともに、大学生ボランティアによる相談支援を行っています。


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