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十勝産エゾ鹿肉を使ったジビエ料理で地域おこしを

北海道十勝地方と東京台東区・墨田区の連携

野生鳥獣の食肉を使うジビエ料理。その代表のひとつがエゾ鹿肉です。ところが過疎化が進む北海道では近年、エゾ鹿が異常に増えすぎて、生態系への影響だけでなく、田畑や森林が荒らされる被害が多発しています。増えすぎたエゾ鹿を食材として活用し、新たな地域おこしができないか、とこのほどエゾ鹿を使ったジビエ料理の試食会が都内で開かれました。(2022年12月11日公開)

シンタマと呼ばれるモモ肉の部位を紹介する
「中坂下 ちそう」のオーナー大里利光さん

日本料理の師範がジビエ料理の新しいメニューに挑む

11月30日。台東区上野の日本料理店「中坂下 ちそう」に地元の飲食店関係者や報道関係者が集いました。日本料理歴50年を誇る「中坂下 ちそう」のオーナーである大里利光さんが、エゾ鹿を使ったジビエ料理を考案し、紹介するというイベントです。

野生のエゾ鹿は、腕のよいハンターが一発で仕留め、2時間以内に解体処理をしないと全身に生血の臭みがまわって使えないとのこと。この日使われたエゾ鹿は、冬を前に脂がのって肉のしまりがよいとされる、9月から11月に獲れた「秋鹿」を現地で素早く処理し、冷凍保存したものを専門精肉店から入手しました。


メニュー1「鹿前足の割粉揚げと黒酢ソースあえ」

最初に出てきたのは「鹿前足の割粉揚げと黒酢ソースあえ」。鹿前足は、比較的安価に手に入るため、大里さんがあえてメニューに加えました。

ポイントは、硬いイメージのある前足の部位をいかに柔らかく仕上げるか。大里さんによれば、コーラなどの炭酸と水を合わせた中に入れて、アルミホイルで蓋をして、ネギとしょうがとブイヨンで2時間を目安に竹クシがとおるくらいまで煮込み、塩気で下味を付けます。

「鹿前足の割粉揚げ」は、その前足の赤身の部位を切りそろえて、卵とかき混ぜ、片栗粉とサラダ油を入れて一晩冷蔵庫に入れて寝かし、翌日、小麦粉、卵、パン粉を付けて180度の油でフライにしたもの。3分ほどでさっと揚げます。

もう1つの「鹿前足の黒酢ソースあえ」は、肉につける黒酢ソースが決め手。中国産の黒酢と日本産の黒酢をミックスしたものに、黒にんにくのペースト、砂糖、濃い口しょうゆを合わせて、片栗粉と水を溶いてソースをつくり、前足肉に絡めます。 

前足の部位は比較的安価で、一般の飲食店でも手が出せる手ごろな価格とのこと。手をかけることで、ほどよく柔らかくなり、味わい深い一品に仕上がりました。


メニュー2「シンタマ肉の甘辛煮」

次の一品は、大里さんがその場で思いついてつくってくれました。柔らかいモモ肉の部位であるシンタマを、ネギと一緒にさっと甘辛く煮たもの。大里さんお勧めのエゾ鹿の脂身を使い、上品な味わいの脂身が焼き肉風の一皿を深い味わいに仕上げてくれました。

シンタマは鹿肉ならではのさっぱりした赤身です。ステーキなどの食材にも用いられます。


メニュー3「鹿肉の草なべ」

この日のメインは、「鹿肉の草なべ」。柔らかいシンタマと呼ばれる部位を使ってすき焼き風の野趣あふれる料理となりました。

行者ニンニク、ニラ、ニンニクの軸、ささかき牛蒡、長ネギ、豆腐などを食べやすく切り、それに市販のめんつゆを加えたもので煮込み、最後に仕込んでおいた鹿肉を野菜の上に乗せて、火が通ればでき上がりです。

この料理にもエゾ鹿の脂身が使われ、ほどよい深みのある味わいを醸し出していました。

大里さんによれば、料理の料には「はかり」、理には「おさめる」という意味が……。料理のアイデアは、素材を足し算や引き算で「はかり」「おさめる」計算式がしっかりできれば、よい料理になると語ってくれました。

試食会後、大里さんと言葉を交わす参加者の新元美幸さん(手前)と三宅奈生さん(奥)

この日の試食会に参加した墨田区曳舟で「二階の食堂デリカフェ」を経営するオーナーの新元美幸さんとシェフの三宅奈生さんは、「エゾ鹿の赤身はさっぱりしており、このメニューならお腹がいっぱいでも食べられそう。エゾ鹿のよさを生かした料理にチャレンジしたい」と抱負を語っていました。


【メニュー開発者プロフィール】

大里利光(おおさと としみつ)氏
日本料理店「中坂下 ちそう」オーナー
公益社団法人 日本料理研究会 師範

1971年、田園調布料亭「大国」にて日本料理を修行。目黒天恩山五百羅漢寺「らかん亭」で調理長を務めた後、築地本願寺伝道会館取締役調理長を務める。「東天紅」上野本店にて料理長・料理顧問として活躍しヤマサ醤油にて料理顧問として商品開発にも従事。2006年に「中坂下 ちそう」をオープンし、現在に至る。


3年目を迎えた「たいとう・すみだ 十勝ウィーク」

今回の催しは、北海道十勝地域(16町2村)と東京都台東区・墨田区が、2020年度から北海道の〈大地のタカラ〉と東京が持つ〈江戸のチカラ〉を結び付ける「たいとう・すみだ 十勝ウィーク」として展開してきたイベントのひとつ。

双方の人や企業の深い交流をとおして「関係人口」の創出を目指し、双方の地域おこしに生かそうという試みです。

3年目となる本年は11月18日(金)から12月6日(火)の期間、台東区・墨田区内の24の飲食店が「十勝食材フェア」の名のもと、十勝の豊かな食材を使った特別メニューを出しています。また、「十勝特産品フェア」「クッキング交流会」などを通じて、両地域の人々の交流とともに、旬の食材や特産品で連携を進めています。

●運営事務局・お問い合わせ先関係人口創出プロジェクトPR事務局
Mail:info@makesweb.com
公式サイト:https://tokachi-taito-sumida.com/


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