環境

ネットゼロ達成のパートナーにシンガポールの脱炭素ベンダーが日本進出

クラウド上のソフトウェアを使って、脱炭素化に向けた道筋を提案するシンガポール発のクリーンテック企業Terrascope(テラスコープ)。6月に日本市場でのサービス開始を発表しました。日本進出に際しては、三菱商事、みずほ銀行、日本テトラパックと戦略的パートナーシップを結び、当面は食品・農業、消費財、テクノロジー分野に注力して、カーボンのネットゼロ達成を目指します。(2023年6月25日公開)

記者発表会登壇者の皆さん。左から日本テトラパック代表取締役社長のアレハンドロ・カバルさん、三菱商事執行役員食料本部長の小林秀司さん、Terrascopeサステナビリティアドバイザーの小木曽真理さん、Terrascope CEOのマヤ・ハリーさん、オーラム・グループ共同創設者兼グループCEOのサニー・ジョージ・ベルギーズさん、みずほ銀行サスサステナブルビジネス部長執行理事の角田真一さん

排出量を正確に測定し、マネージできていますか?

記者発表会の場で流れたTerrascopeの以下の分析からご覧に入れましょう。

90%以上の企業が、排出量を包括的かつ正確に測定できておらず、その大多数がスコープ3の測定を除外しています。

およそ85%の排出量が、測定が非常に困難な間接的なサプライチェーン排出量(スコープ3)で占めています。

正確な炭素排出量の測定により、企業において、脱炭素に向けた取り組みを成功させる可能性が3倍高まります。

ネットゼロ=つまりカーボン・ニュートラルに取り組もうとする日本企業には少し耳の痛い話かもしれませんが、これは事実ではないでしょうか。日本企業の多くは、真面目に熱心にカーボン・ニュートラルに取り組もうとしているにも関わらず、スコープ3と呼ばれる自社と関連する間接排出量については、どこかまだ他人事という印象があります。Terrascopeは、測定できないものは削減できない」という主張のもと、スコープ3に踏み込もうというものです。

<本誌からの用語説明>
スコープ1: 事業者自らによる温室効果ガスの直接排出量
スコープ2: 他社から供給された電気、熱、蒸気の使用に伴う間接排出量
スコープ3: スコープ1、スコープ2以外の間接排出量(事業者の活動に関連する他社の排出を含む) 世界ではCDP(カーボン・ディスクロージャー・プロジェクトの略: 気候変動問題に影響力を持つ国際NGO)をはじめ、企業が間接的に排出するサプライチェーンでのGHG排出量(二酸化炭素やメタンなどの温室効果ガスの排出量のこと)としてスコープ3(製造、輸送、出張、通勤等)を管理し、対外的に開示する動きが強まっています。


Terrascopeのスタンスは排出量を正確に測定し、マネージすること

Terrascopeは脱炭素化・排出量の測定管理プラットフォームです。エンドツーエンドの脱炭素化SaaS(Software as a Serviceの略:サービスとしてのソフトウェアを示す)を使って、大規模事業体における炭素排出量を正確かつ効果的に測定し、削減に向けた道筋を明らかにします。

同社の正式な発足は2022年6月ながら、スコープ3の排出量管理では10年以上の経験を持ち、自主的な環境開示システムを主導するCDP(カーボン・ディスクロージャー・プロジェクトの略: 気候変動問題に影響力を持つ国際NGO)のグローバルソフトウェアソリューションのゴールドパートナーに認定されています。

シンガポールに本社を置くTerrascopeは、日本を含むアジア太平洋地域(APAC)とヨーロッパの主要な市場で事業を展開しており、シンガポール金融管理局のESG Impact Hubのパートナーでもあります。

これまでに、農業、食品・飲料、製造業、小売業、ラグジュアリー業界、輸送、不動産、TMTなど、さまざまな分野のパートナーと連携し、日本国内の三菱食品株式会社、noco-noco Pte. Ltd.、POKKA PTE. LTD.、株式会社MCアグリアライアンスをはじめ、脱炭素化に取り組む日本やアジア太平洋地域の著名な企業にも導入されています。

Terrascope のエンドツーエンドの脱炭素化ソリューションは、企業が正確で効果的な排出量(特にスコープ3と呼ばれるサプライチェーン排出量)の計測・管理ができるようデータ、データ解析、デジタルツールを提供します。

日本進出は需要なマイルストーン

記者発表会でスピーチに立ったTerrascope CEOのマヤ・ハリーさんは、

「日本企業の脱炭素化への要望は非常に強く、これをサポートするために日本への投資を決定しました。私たちの専門知識と業界を牽引するソリューションを日本でも提供できることを誇りに思っております。この度の日本への事業参入は、Terrascopeが世界中の企業から関心を持たれていることを証明しており、重要なマイルストーンとなります。」と述べました。

スピーチをするTerrascope CEOのマヤ・ハリーさん

Terrascope の委託によるVerdantixの最新調査によれば、調査に回答した日本企業の85%がなんらかの形で排出量削減目標を設定していると回答しています。しかし、それら日本企業のうち、スコープ3を重視する温室効果ガス排出量削減に対する国際認証であるSBTi(Science Based Targets initiative)に基づく目標を掲げているのは約30%にとどまっていると語りました。

不完全なかつ不正確な排出量策定は、多くの場合30〜40%の誤差を伴うため、脱炭素化において大きな前進にはならないとも語っています。Terrascope の統合SaaSソリューションは、データサイエンス、機械学習、そしてサステナビリティに関する専門知識を組み合わせることで、企業がネットゼロを目指すにあたって最も効果的なアクションができるよう、ガイダンスを提供します。

Terrascopeを支援するシンガポールのオーラム・グループ(グローバルで食品/農業関連事業を展開) 共同創設者兼グループ CEO サニー・ジョージ・ベルギーズさんも登壇し、「日本は、持続可能なイノベーションを起こすことができる計り知れない可能性を秘めています。Terrascopeの先進的な脱炭素化ソリューション及び業界を牽引する企業との戦略的パートナーシップによって、日本企業の皆様のネットゼロ目標達成に向けた支援をできると確信しております。」と述べました。

オーラム・グループ共同創設者兼グループCEOのサニー・ジョージ・ベルギーズさん

記者発表会では、日本進出で戦略的パートナーシップを結ぶ、三菱商事、みずほ銀行、日本テトラパックの代表からも発言がありました。

なお、マヤ・ハリーさんは、Twitter、Google、Microsoft、Ciscoなどで20 年にわたる ビジネスキャリアを持つ、経験豊富なエグゼクティブです。


Terrascope Japan株式会社
本社:東京都中央区、代表取締役:マヤ・ハリー
詳しくは、https://www.terrascope.com/ja/


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