CSRフラッシュ

VR(仮想現実)を未来の福祉に役立てる

メタバースの福祉領域への活用の可能性を探る

新しい年の幕開けとともにメタバース(仮想空間)、VR (仮想現実)、AR (拡張現実)などの言葉を目にする機会が増えています。これらの技術が現実社会に根ざすにはもう少し時間がかかるとされる中、Meta日本法人Facebook Japanは東京大学先端科学技術研究センターの登嶋健太さんや自治体と連携し、2023年から実走する  「VRを活用した未来の福祉プロジェクト」を発表しました。(2023年1月16日公開)

VRを使った疑似旅行体験。
右が東京大学先端科学技術研究センターの登嶋健太さん

黎明期を迎えるメタバース

メタバースは、VR やAR などを使って現実世界と仮想世界を融合させる技術です。すでにゲームやエンターテインメントなどの産業で新しい試みが始まっています。ただ、私たちの暮らし、それも日常の暮らしにどこまで活用が進むかは、まだまだ未知数といってよいでしょう。

しかし、昨年10月にFacebookが社名     をMetaに変更したことでも分かるように、今後、人と人のコミュニケーションづくりにメタバースが貢献をする時代は確実に近づいているといえるでしょう。

メタバースの最大の優位点は、物理的な距離や各自の属性を飛び越えて、人と人の新しい関係性を育てていけるところにあります。

すでにフィットネス業界では、自宅や仕事場にいながらトップアスリートによるレッスンができるような試みもスタートしつつありますが、今後は「遊び」「交流」の場だけでなく、「働く」「学ぶ」の場はもちろん、社会の高齢化でニーズが広がる「福祉」の分野でも活用策が広がるものと期待されています。


VRの活用で未来の福祉の可能性を探る

VRやメタバースは、人と人をつなぐコミュニケ―ションの手段であり、目的ではありません。Facebook Japanはその可能性を広げるため、産官学との連携を強め、次世代XR(クロスリアリティ)クリエイター向け教育プログラム     「Immersive Learning Academy」をスタートさせるとともに、2022年には「METAVERSE EXPO JAPAN 2022」を開催しました     。

※XR(クロスリアリティ): 「VR(仮想現実)」「AR(拡張現実)」「MR(複合現実)」といったメタバース先端技術の総称)

そして、2023年には東京大学先端科学技術研究センターの登嶋健太さんやすでに地域連携協定を結ぶ自治体と協力し、「VRを活用した未来の福祉プロジェクト」に挑戦します。

プロジェクトの立ち上げを発表する東京大学先端科学技術研究センターの登嶋健太さん(右)とFacebook Japan代表の味澤将宏さん(左)

登嶋健太さんは、介護施設で高齢者の介護に携わった経験を持ちます。施設でリハビリを受けるシニア層の多くは健康上の理由から行動制限を受けているケースが多く、旅行はもちろん思い出が詰まった場所にも簡単に訪れることはできません。

そうした高齢者を多く目にした登嶋さんは、こうしたシニア層の人々に“生きがい”を与えることができないかと考え、入所者がなつかしいと思える場所を聞き出し、その場所を撮影して、見せるといった試みを続けてきました。もちろん、画像を見た高齢者は大喜びです。

2018年に東京大学先端科学技術研究センターの学術専門職員     となった後は、360度の映像が撮れるカメラに加えて、Meta Quest を使ってさらに魅力ある映像による「VR旅行」の実現に力を注いでいます。

※Meta Quest 2(メタ クエストツー):  Meta     が開発したバーチャル・リアリティヘッドセットのこと。ハードウェア、機能、価格のバランスが優れているとされる。

なお、プロジェクトの発表会では、老年医学や虚弱予防を専門とする東京大学高齢社会総合研究機構機構長 飯島 勝矢教授とともに 「VRを活用したこれからの福祉」と題し、VRやARなどのテクノロジーを活用した未来の福祉の可能性についてトークセッションが行われました。

飯島教授は、高齢化社会の現状を踏まえて、健康寿命を伸ばして健康で居続けるためには、社会性や人とのつながりが必要であると語りました。

トークセッションで「VRを活用したこれからの福祉」について語る
東京大学高齢社会総合研究機構機構長 飯島 勝矢教授(真ん中)

盛岡市と神戸市で「VR旅行」ワークショップを計画

登嶋さんのグループでは、これまでに千葉県浦安市や福岡県大牟田市で高齢者向けの「VR旅行」体験会の取り組みを行ってきました。

これまでの経験で見えてきたのは、地域の映像を撮るという取り組みは、その映像を使った「VR旅行」の素材集めにとどまらず、その地域の観光名所や文化財、商店街、街並み、地域イベントなどを深く知り、経済やコミュニティの活性化にもつながる取り組みだということ。地域の中から映像撮影に協力してくれる仲間を集うことも大切なアクションだったのです。

今年2023年からスタートする「VRを活用した未来の福祉プロジェクト」では、Facebook Japanと地域連携協定を結ぶ     岩手県盛岡市や兵庫県神戸市の協力を得て、映像の撮影に協力してくれる地域の仲間に働きかけるワークショップをスタートします。

今回の取り組みに関心のあるシニアの方々などを対象に360度カメラの操作方法を教え、それぞれの町の撮影対象を選定するとともに撮影を行います。そして、撮影したコンテンツを活用し、福祉施設にてMeta Quest 2を使ってVR旅行体験会を行う予定です。

こうした取り組みに盛岡市の谷藤裕明市長は「VRやメタバースを活用した本市の魅力の発信につなげたい」と語り、神戸市のスマートシティ担当竹村健係長は「VRやARテクノロジー活用の可能性を一緒に模索したい」とそれぞれ抱負を語っています。


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