国内企業最前線

“おいしさ”を“ながもち”させる新しい食品包装材「おいしさスキン®」を提案

住友ベークライトの「おいしさスキンパックマルシェ」から

食品ロスとプラスチック使用量の削減を目指し、住友ベークライトが日本初となるバリアスキンパックフィルム「おいしさスキン®*1を開発・発売しました。東京・代官山で開催された「おいしさスキンパックマルシェ」を訪ね、同社フィルム・シート営業本部の田中厚本部長に話を伺いました。(2023年7月8日公開)

*1 2019年12月に「おいしさスキン®」として商標登録済み

マルシェでは「おいしさスキン®」で包装された食材の販売が

酸素バリア+完全密着の包装フィルムで
食材の鮮度を保ち、“おいしさ”をさらにアップ

スーパーマーケットで買い物をされた方ならお分かりでしょう。肉、魚などの生鮮食材の多くが包装材でしっかり包装されているにもかかわらず、日持ちがせず、消費期限が短いことを……。高価なステーキ肉などはわずか数日の時間経過で、肉汁が溶け出し、肉が酸化して赤黒く変色し、売れ残るとフードロスにもつながっています。

住友ベークライト株式会社(所在地:東京都品川区 代表取締役社長:藤原 一彦、以下住友ベークライト)が、このほど開発・発売したバリアスキンパックフィルム「おいしさスキン®」は、包装する食材にぴったりフィットする特別な機能を持っており、これを包装材に用いると肉など食材の鮮度を長持ちさせるだけでなく、保存中に熟成が進むことで、旨みをより増加させる効果も生まれました。

住友ベークライトでフィルム・シート営業本部をけん引する田中厚営業本部長に「おいしさスキン®」の特長とともに、開発の苦労話を聞きました。


食材にシワなくぴったり張りつく、特殊なフィルムを開発しました

住友ベークライト株式会社
執行役員 フィルム・シート営業本部
田中 厚本部長

開発の背景

Q1 「おいしさスキン®」の開発にはどのような背景があったのでしょうか。

田中: お肉の消費期限を延ばし、食品ロスを削減したいという思いがずっとありました。スーパーでは、お肉はトレーの上にラップをして売られていますが、この包装だとお肉とラップの間にすき間ができるため、時間の経過とともにお肉からドリップと呼ばれる肉汁が出てきます。ドリップは①見映えが悪いうえに、②菌が繁殖する可能性もあるため、お肉の消費期限は1日から2日と短くなります。

Q2 スキンパックフィルムは欧州で普及していると聞いています。日本での普及はなぜ遅れたのでしょうか。

田中: 欧州はハム・ソーセージ発祥の食文化があり、以前よりバリアフィルムを使用してきた歴史があるため、すでにお肉のスキンパックが普及しています。私の推測ですが、わが国のスーパーは衛生管理が徹底しているうえに、ブロック肉や枝肉を処理する職人さんの細やかな技術力もあったため、現在のような仕組みが続けてこられたのでしょう。ただ、どの職場でも人手不足が叫ばれています。食材の加工方法も変化が求められています。

「おいしさスキン®」の技術

Q3 「おいしさスキン®」は家庭用の食品包装用のラップ材と異なる技術が使われているのでしょうか。

田中: ええ、原料も加工技術もこれまでとは全く違う技術が使われています。食材にぴったりすき間なくフィットするフィルムをどう実現するかがテーマでしたから、フィルムの分子と分子をつなぐ技術として、「架橋」という技術をはじめ、12もの特許技術を駆使しています。

「架橋」とは、熱、光などのエネルギーを加えると、フィルムの分子同士が手をつないで網目構造となり、フィルムの強度を向上させる技術です。架橋により網目構造を持たせたフィルムはゴムのような柔軟性を保ちます。スキンパックは、成形時にフィルムに熱をかけ、包装後の冷却する過程でこのゴムのような特性が活かされ、食材にぴったり張りつく密着包装を可能にします。

市場展開

Q4 意匠性も良いので、“おいしさ・ながもち・きもちいい”をキャッチコピーにしていますが、普及にはどのようなハードルが考えられますか。

田中:「おいしさスキン®」を使えば、これまで2〜3日だったお肉の消費期限を、2週間くらいまで延長できます。消費期限が延びるだけでなく、お肉の熟成が進んでおいしくなると実証されています。ただ、導入時にはフィルムを熱で温める機器が必要となります。包装した食材は、パッケージのままで陳列しておける日数が増えるため、廃棄ロスは大幅に削減できるはずです。トレーの代わりに板紙の台紙を使用すれば、プラスチックの使用量は20%削減できます。

「おいしさスキン」特設サイト:https://www.sumibe.co.jp/skinpack/


誌上「おいしさスキンパックマルシェ」

6月29日(木)から7月1日(土)の3日間、代官山アドレスで開催された「おいしさスキンパックマルシェ」には、「和牛うらい」「燻製BALPAL(バルパル)」「マルケー食品」の3店舗が出展。「おいしさスキン®」で包装したマルシェ限定パッケージのグルメを販売しました。

和牛うらい

希少な黒毛牛肉をさらに選別し、牛一頭を丸ごと仕入れてさばく、こだわりの独自技術で加工・販売する和牛専門店。手間がかかる昔ながらの手法で部位ごとに熟成を行った牛肉を「おいしさスキン®」でさらにおいしさを閉じ込めてお届けしています。

燻製の専門店「燻製BALPAL(バルパル)」

「手軽におうちでバル」をコンセプトに、持ち帰って家飲みに、また仲間とのホームパーティーにもおすすめのアンティパストやおつまみを揃えた燻製とナチュラルチーズ専門店。その人気おつまみの数々を「おいしさスキン®」でワンプレートアンティパストに。フィルムをはがすだけでお手軽に楽しめます。

「マルケー食品」

50年以上水産食品加工業界をけん引してきた「マルケー食品」。創業以来培ってきた食品加工の技術やノウハウによって生まれたこのパエリアシリーズは、レンジ調理するだけで本格的なパエリアが楽しめる商品として人気を博しています。


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