国内企業最前線

平和時のビジネスだからこそ、収益の一部を社会にお返しする

カタログハウス『通販生活』の社会貢献

活況続く通販業界にあって独自のポジションで根強いファン層をつかむ㈱カタログハウスの『通販生活』。「九条を守れ」「原発ゼロ」など独自の主張を掲げながら、暮らしを豊かにしてくれる生活雑貨、季節の服、蓄熱肌着などで読者の共感を集めています。今回はそんな『通販生活』の社会貢献について聞いてみました。[2026年1月26日公開]


2026年1月新春号には気になるあの人が登場

冒頭の写真は、『通販生活』2026年新春(1月)号の表紙です。白髪の男性の後ろ姿に見覚えはないでしょうか。政界を引退後、2011年の東日本大震災で電源喪失と水素爆発を起こした東京電力福島第一原子力発電所の事故を経て、「脱原発」の主張を強める小泉純一郎元総理です。

「読者のみなさん、お久しぶりです」のフレーズとともに、9年ぶりに登場した小泉さんが『通販生活』の巻頭の6ページで、「地震もある、津波もある、火山もある日本で、もう原発やっちゃダメだ」「この国に“核のゴミ”の処分場は造れないんだから…」と熱く語っています。


真面目なテーマほどユーモアを込めて

新春号では、思わずクスッと笑ってしまうもう1つの企画も登場します。思想家で武道家の内田樹さんと作家の高橋源一郎さんの新春九条対談です。

二人が京都の伝統野菜である九条ネギを手にしながら「自由に憲法を考えてみると面白い」と語りあう対談ですが、「九条ネギだって」(内田さん)、「センスが昭和だね」(高橋さん)とのやり取りから始まります。

防衛費の増額が当たり前のように推し進められる昨今のきな臭い社会風潮を憂い、憲法第九条の精神を暮らしにどう生かしていくかが語られます。

『通販生活』の表紙には、これまで〔「平和」があるから「買い物」ができる。〕の言葉が掲げられていましたが、2025年冬号からは〔平和⇒憲法九条〕に変え、〔「憲法九条」があるから「買い物」ができる。〕とよりストレートな文言に変えています。

先の大戦では、「欲しがりません。勝つまでは」と、この国は我慢ばかりを国民に強いてきました。「戦争が始まったら、買い物どころではなくなる」との思いから、戦後のわが国が憲法九条に託した非戦の誓いをより明確にしたいと考えたのです。


社会の持続可能性にふさわしい商品を届ける通販会社でありたい

『通販生活』を発行するカタログハウス社では、以下のような「商品憲法」を掲げ、商品の開発に生かしてきました。

カタログハウスの商品憲法
第1条 できるだけ、「地球と生物に迷惑をかけない商品」を販売していく。
第2条 できるだけ、「永持ちする商品」「いつでも修理できる商品」を販売していく。
第3条 できるだけ、「寿命が尽きた商品」は回収して再資源化していく。
第4条 できるだけ、「ゴミとCO2を出さない会社」にしていく。
第5条 できるだけ、「メイド・イン・ジャパン」の買い物で雇用を増やしたい。
第9条 できるだけ、核ミサイル、原子力潜水艦、戦闘機、戦車、大砲、銃器のたぐいは販売しない。

最近ではネットを利用した通販の参入もあって、とにかく売れればよいという思わせぶりな売り方が広がっています。『通販生活』では、自らを律するこの「商品憲法」をモットーに、①「価格」より「品質」、②他社製品にはない優位性を、③買い物ついでに社会貢献の3つを心がけ、信頼できる商品の提供に努めています。

23-11-02-030.psd
本社地下1階にある通販生活ショールーム

読者のニーズをしっかりつかみ、魅力ある商品を育てる

『通販生活』のメインのターゲットは、60代以降の女性シニア層です。この世代の女性は、“貧しさと豊かさ”の双方を知り、社会進出の先駆者として生きてきました。

高齢者の仲間入りを果たしつつあるこの世代が抱える、日常生活におけるちょっとした困りごとやニーズをしっかりキャッチし、魅力ある独自の商品提案につなげることが『通販生活』に求められているのです。

新春号では、2025年度の「読者が選んだ暮しの道具ベスト100」が発表されています。1位は強力な吸塵力を秘めた軽量のコードレス掃除機「マキタのターボ・60」。こちらは11年間連続1位という人気の商品です。2位は安眠につながる「メディカル枕」。眠りが浅い70代以上に大うけの商品です。そして3位はお腹をホカホカにする「フジヒート腹巻」。厚さ1ミリの極薄の腹巻ですが、1日中お腹を暖めてくれます。

「ベスト100」の商品の中には、「私の老いるショックを軽減してくれた体の道具」というページもあります。映画『男はつらいよ』でおなじみの俳優前田吟さんが白内障手術後のまぶしさを軽減する人工メラニン入りの薄色サングラス「メラニーナ」を推奨。続いて漫画家いがらしゆみこさんが就寝中の冷えから身体を守る「モスコビー羽毛布団」を勧めています。

著名人や読者による顔写真と実名入りの商品紹介は、商品の実体験を語るものですが、たとえば「マキタのターボ・60」では、かつては「軽くて、価格も手ごろだが、ターボ使用時の音が気になる」といった率直なコメントもありました。そうした情報を読者と共有することで、商品の次の改良に生かすこともありました。


買い物をとおして災害被災地の雇用と復興を応援

新春号では、「買い物の力で能登を応援したい」との特集も登場します。2024年の元旦に発災した能登半島地震から2年が経過しましたが、能登の復興は遅れに遅れ、過疎化に拍車がかかっています。

『通販生活』は、2025年盛夏号で「被災地域の製品を買ってください」という特集を組み、能登の19の物産を紹介しましたが、今回は能登各地から集めた18の物産を紹介しています。

買い物をとおして災害被災地の雇用と復興を応援

稼がせてもらった社会に少しばかりのお返しを

『通販生活』を運営するカタログハウス社では、2021年に「国境なき医師団」への支援を決め、現在は『通販生活』本誌とウェブサイトの売上げの1%を寄付しています。2025年だけでその金額は1億2,347万4,913円となっています。

きっかけはコロナ禍でマスクや空気清浄機などの売上げが大きく伸びたことでしたが、こうした収益の一部は社会にお返ししなければならないと考えたのです。

2025年の冬 (11・12月) 号では、パレスチナのガザ地区の医療支援に派遣された「国境なき医師団」の看護師本川才希子(もとかわ・さきこ)さんとミュージシャン坂本美雨(さかもと・みう)さんによるガザ特集の対談も掲載しています。

ガザ地区の医療支援に派遣された本川さん(左)と患者たち。同僚の妹(中央左)は両手を複雑骨折し、彼女の2歳の娘(中央)は両足を切断しました。©MSF

また、2002年からは世界の紛争地の病気の子どもたちをドイツへ連れていき治療する「ドイツ国際平和村」への読者カンパを募り、カンパ額の10%の金額をカタログハウス社も支援しています。2016年からは困窮状態にある子どもたちの進学準備支援に取り組むため、「公益財団法人あすのば」への同様の支援を行っています。

「会社はお金を稼いで従業員たちの生活を守っていく利益集団だが、少し余裕ができたら稼がせてくれた消費者や世間にお返しをしなければ…」が、カタログハウス社の創業者である斎藤駿相談役がよく口にする言葉。創業者のこの思いが、いまもカタログハウスと『通販生活』の基本姿勢となっています。


『通販生活』でしか買えない“一手商品”を揃えていきたい

1976年に創業し、1982年にカタログ雑誌『通信生活』を創刊したカタログハウス社と『通販生活』。通販業界では読み応えのあるカタログ雑誌づくりの先駆者として評価されてきました。ただ、最近ではネット通販などの普及もあって、厳しい競争の真っただ中にあります。

今回の取材に協力いただいた『通信生活』編集長の関根理(せきね・おさむ)さんと、読み物編集長の釜池雄高(かまいけ・ゆたか)さんのお二人によれば、「これからはカタログハウスの『通販生活』でしか買えない“一手商品”の取り扱いをさらに増やしていきたい」と抱負を語ってくれました。

カタログハウス社のロビーに展示されたカタログハウス社のロビーに展示された

<関連記事>
サントリー食品が「100%リサイクルペットボトル」を使用へ
“サステナブルなボトル”の使用で年間4億本相当のペットボトル廃棄を抑制
新製法でサラダ野菜の鮮度を保ち、食品ロスの削減に貢献
十勝産エゾ鹿肉を使ったジビエ料理で地域おこしを
VR(仮想現実)を未来の福祉に役立てる
「小学生カカオハスクアイデアコンテスト2022」から
ソフトバンク柳田選手に国連WPF(世界食糧計画)が感謝状
舞台セットも衣裳もプラスチック。
温室効果ガスの削減対策は道半ば~WWFジャパンのCOP27報告か
相違点よりも類似点~第24回大使館員日本語スピーチコンテスト2021
がん患者と家族を支援する「リレー・フォー・ライフ」に日本トリムが協賛
世界食料デーにあわせて「おにぎりアクション2022」開催
国境なき子どもたち(KnK)発足25周年ワークショップ
生活困窮世帯の保護者1,902名へのアンケートから
ドールの『バナナエシカルバリューチェーンプログラム』が始動
カーボンオフセットで途上国の森は守れるのか

TOPへ戻る